総合内科の専門性に関する一考察

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よく、「総合内科には専門性がない」という声を耳にします。一方総合内科医からは、「総合内科にも専門性はある」という声も上がります。どちらが正解なのでしょうか?そして、総合内科の専門性とは何なのでしょうか?

Short answerとしてはYes、総合内科にも専門性はあります。しかし、手技など目に見えるスキルではないため、一見してわかりにくいのは確かです。また、ひとくちに総合内科といっても得意分野が多様であることも、専門性を見えにくくしている一因だと考えます。

専門性を考える時に、その道を極めたエキスパートがどんな活躍をしているかをみると、参考になります。外科医でしたら、難易度の高い手術を高い技術で実施できる医師でしょう。では、総合内科ではどんなエキスパートがいるでしょうか。

極端に優れた人(野球でいえば大谷翔平選手くらい)から、専門性とは何かを考察するという戦法を考えてみます。私がこれまで出会ってきた優れた総合診療医の先輩方をイメージして、専門性をいくつかのパターンに分類してみました。

誰も診断できなかった病気を診断できる医師

臨床推論の能力が高く、前医で診断がつかなかった症例に向き合い診断に迫る医師は、専門性が高いですね。例えば、不明熱で紹介を受けて成人スティル病と診断し、治療導入して寛解に至ったケースを経験しました。

私は専攻医で、総合内科の指導医の先生のもとで診療に携わっていましたが、このときの指導医の先生の推論は大変勉強になりました。

各専門科と協働しながら診断困難例を確定診断に導くことは簡単なことではありません。全国各地で実施されているGIM カンファレンスという臨床推論の勉強会では、各施設よりすぐりの症例が提示されて活発な議論が行われています。

私は医学生の時に東京GIM カンファレンスに潜り込んで参加したことがありますが、チンプンカンプンでした。今でも、カンファレンスを率いているレジェンドの領域には遠く及びません。それでも、皆が診断に困っている症例を引き受けてできる限り診断治療に結びつけたいと思っています。

コモンな疾患を高い質で診療できる医師

総合内科では、必ずしも稀な疾患・難しい病態ばかりをみているわけではなく、誤嚥性肺炎や腎盂腎炎といったコモンな疾患を見ることが多いです。

コモンな疾患の経過を把握して、通常と異なる経過であれば診断を見直したり、経過が良ければ早めに退院調整を開始したり、入院中の合併症を適切に判断して対応したり、専門医の診察が必要な状態変化があればコンサルトして引き継ぎを行なったりする。

引き継ぎカルテを書いて、チームで情報共有を徹底し、抜け漏れがないようにする。

このようにある程度標準化されたことをチームで誰もができるようにすることで、お互い休みのときもカバーしやすくする「複数主治医制」がとりやすくなります。

患者数が多くなっても、効率よく診療を行うことで質の高い診療を徹底できることは一つの専門性でしょう。

家族や多職種と連携することに長けている医師

多疾患を持ち複数の科にまたがる診療をしているケースや、医学的のみならず心理社会的プロブレムを抱えているケースで多職種と連携をとり調整を行うことに長けている医師。高齢化社会で、どんな医師でも経験はあると思いますが、特に複雑度が高いケースでもうまくマネジメントできる医師は、専門性が高いと言えるでしょう。

病院だけでなく在宅も行っているまたは在宅の先生とも連携できると、退院調整の幅も広がり患者さんや家族のニーズも満たしやすいと思います。

コミュニケーションやマネジメント力に加えて、地域の特性やリソースも理解する必要があります。総合診療医・家庭医が特に得意とする領域でしょう。

ご本人だけでなくご家族とのコミュニケーションも円滑にとることができ、ACPや代理意思決定の素養もあるのがこのタイプです。

研修医教育に長けている医師

総合内科医は特に研修医の教育に携わっているケースも多いです。コミュニケーション・基本的手技・プレゼンテーション・プロフェッショナリズムなど、医師として基本的な能力を教えることができる専門性を身につけた医師が多いです。

臓器別専門医でも教育スキルが高い先生はいらっしゃり、研修医・非専門医のためにわかりやすく教えてくださると大変勉強になります。総合内科医は臓器別の知識より手前の医師として・社会人としての職業教育を担っている部分もあります。

最近では、タスクシフトの流れもありNPさんの教育も総合内科が担っていることが多いと思います。

教育は誰もがしていますが、体系だって教育プログラムを考案し、評価して、改善までできる医師は多くはないと考えています。

病院・診療所全体のマネジメントができる医師

医療安全・感染症対策・緩和ケア・せん妄・転倒転落対策など、病院横断的なチームに携わっている総合内科医は多いです。このような病院全体を見渡してマネジメントを行い、リーダーシップを発揮する医師は専門性を発揮できるでしょう。関連して、整形外科を中心に術前後の病棟管理を引き受け、整形外科医には手術に集中してもらうことで手術件数を増やし、患者アウトカムの改善につなげる「コマネジメント」モデルをとる総合内科も増えてきています。

診療所の先生方はさらにダイレクトにマネジメントに関わっていることでしょう。

診療のみならず、マネジメントに関心がある先生は総合診療に親和性が高いかも知れません。

いかがでしょうか。

「循環器内科の専門性は何か?」ということを疑問に持つ人はいません。自明だからです。総合内科の専門性が議題にあがるのは、領域の特殊性もありつつ、比較的歴史が浅い分野という側面もあるかもしれません。

総合内科の専門性とは?というテーマに関して考察してみました。皆様からもご意見をいただければ幸いです。

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