総合診療医は「病院総合医」と「家庭医」に大別される
「総合診療医」というと、大まかに「病院総合医」と「家庭医」の2種類にグループ分けすることができます。
米国では、Hospitalistという病棟診療に専属する医師がこの20年で著しく台頭してきました。
日本では病棟専従の医師はまだまだ珍しく、外来診療や救急診療を行なっているところが多いと思います。
一方、米国の家庭医や英国のGPは外来診療がメインで、病棟診療に携わらないようです。Branch先生の記事が参考になります。
日本でも家庭医は主に診療所や在宅のフィールドで活躍しています。
このように、総合診療医には主に2種類あることがわかります。フィールドが異なると当然関心も微妙に異なります。
私はこれまで主に病院総合内科で勤務してきましたので、「病院総合医」タイプです。
病院総合医の関心
病院総合医は主に急性期病院で活躍します。このため、診断学・救急対応・重症患者対応・common diseaseのマネジメントの素養が求められます。
例えば、誰も診断できなかった病気を診断することができるエキスパートがいます。各地で開かれているGIMカンファレンスは臨床推論を勉強するのにとても良い会です。他に、感染症・膠原病・腎臓など全身をみる疾患をスペシャリティに持つ先生や、老年・緩和ケアに造詣の深い先生がいらっしゃいます。
また、コマネジメント・多職種連携・医療の質改善・医療安全など、病院横断的なマネジメントにリーダーシップを発揮している先生がいらっしゃいます。様々な人とコミュニケーションをとって調整を行う役割を担っており、石山先生の言葉をお借りすると、「指揮者」「コンダクター」です。
家庭医の関心
家庭医の理論基盤は家庭医療学であり、いわば疾患のマネジメントだけでなく生活・社会背景(家族や地域も含めた生活)を同様に重視することでしょう。患者中心の医療の技法、複雑困難事例、マルチモビディティ、健康の社会的決定要因、健康生成論などが基盤であり、病院総合医の理論基盤とはやや異なります。
私は病院総合医として働いてきましたが、学生時代を含めて尊敬する家庭医の先生と何人も出会ってきました。ほとんどは診療所・在宅で働かれていて、病棟勤務もされている先生は多くはありませんでした。
NEJMの有名な”Ecology of medical care”で「地域で医療機関を受診するのはごく一部の人に過ぎない」ことを示した図がありますが、家庭医の先生たちは医療機関に受診していない人たちへも医療を届けるために工夫を凝らしていることが印象的でした。
病院総合医と家庭医はフィールドが違うだけ?
同じ総合診療医といえども、関心や学問体系が異なるため、例えば病院総合診療医学会と日本プライマリケア連合学会の学会のテーマは重ならない部分も多いです。病院総合医=病院、家庭医=診療所、というフィールドの違いだけではなく、専門性に対する考え方が異なるように感じます。
自分が普段診療しているなかでも、「病院総合医」寄りの先生と「家庭医」寄りの先生で考え方が異なる部分があるなと感じています。総合診療に関心のある医学生の方は、自分がどちらかというとどちらに関心があるのかはっきりさせておくと、今後のキャリアを考えるうえで参考になるかもしれません。
というのは、自分は医学生から卒後研修を受けている期間で、「総合診療」へ従事したいという希望は一貫していましたが、「病院総合医」として生きていくのか、「家庭医」として生きていくのかについてはあまり深く考えていませんでした。
初期研修医は病棟診療を中心に研修することが多いと思いますが、2年間ではあまりに分からないことが多すぎて、後期研修でも内科をローテートしました。その後も臨床研究を勉強するために病院総合内科に所属しながらSPHに通い、現在に至ります。診療所や在宅の研修期間もあり、大変興味深いと思ったのですが、内科専門医プログラム→総合内科となったこともあり、結局主戦場は病院です。
しかし、総合内科として受けてきたトレーニングと、新しい総合診療専門医→家庭医の先生の受けるトレーニングが似ているようでかなり異なることがわかってきました。学問体系が異なるのですから当然かもしれません。例えば、総合内科は内科学が基盤であり、JOSLERのレポートも疾患の診断や治療について考察を深めます。家庭医は家庭医療学が基盤であり、ポートフォリオで自己の診療を省察します。
自分は知らず知らずのうちに病院総合医としてのアイデンティティを確立してきたことになります。もちろんこれから家庭医療の研修も受けてダブルボード(2つの専門医)をとりにいくこともできるとは思いますが、病院総合医としての働き方を突き詰めてもっとうまくなりたいという思いや、急性期ならではのやりがい、病院横断的業務のやりがいも感じていたり、臨床研究に携わるうえで今の環境を変えるつもりはありませんので、しばらく現在の働き方が続くと思います。
病院総合医と家庭医が融合するときはあるか?
ここでねじれとして、臨床としては病院総合医として働いてきたのに、研究テーマとしては家庭医療学に関連するテーマを選んできたという点があります。臨床と研究に距離を感じてしまっていたのですが、思うと病院でのフィールドと(家庭医療学的)研究テーマに距離を感じたのは必然でした。
病院総合医としての研究を行うのであれば、医療の質改善、経済性の評価などヘルスサービス研究と相性が良いでしょうし、診断学を極めていくやり方もあるかもしれません。特定の領域・疾患にスペシャリティを定めて深堀りしていく方法もあるかもしれません。
一方で家庭医としての研究は地域のフィールド・地域住民と相性がよく、病院にいるだけでは見えてこない「病院にアクセスできない/しない方」を考慮することが多いです。
臨床では病院総合医として働きながら、研究では家庭医療的な考え方の問いを立てているーずっと悩んでいた「臨床研究をしているのに、臨床と研究の距離が遠く感じる」ことの一因がこのねじれにあるのではないかというように、最近言語化できてきました。
しかし、研究は異なる分野の組み合わせや融合で発展する側面もあります。日本ではオーバーラップする領域も多いです(病院総合医が外来や訪問診療を行うこともありますし逆もしかり)ので、ねじれを逆手にとって、病棟診療における家庭医療的学問基盤から生まれる問いを可視化していくことが隙間産業として自分の入り込める余地かと思っている次第です。
高齢化が進行して、入院マネジメントもbioだけではうまくいかないケースも増えているため、今後は病院総合医と家庭医の融合がもっとはかられていくかもしれません。
実際、日本では病院総合医と家庭医のオーバーラップする部分が多いかもしれません。「病院家庭医」という言葉があり、病棟診療をしていても家庭医療を基盤としている先生はたくさんいらっしゃいます。先輩方のあとをおって、研鑽を積んでいきたいと思います。

