国際学会で学んだ忙しいホスピタリストのための生涯学習法 3選

忙しいホスピタリスト(病院総合診療医)が仕事をしながらどうやってスキルを磨けばよいでしょうか?

国際学会 (Society of Hospital Medicine)で学んだことをベースに自分の経験を上乗せしてお伝えします。

1. 寝る前の5分でできる「振り返り」

寝る前に、今日診た患者さんの中で印象に残っている人のことを思い浮かべましょう。

そして、その方の「一行プレゼン」(例:若年女性の突然発症の頭痛)、診断の鍵となる情報、代替診断を除外した検査データについて思い出してみましょう。

これを継続することで、臨床的な知識を身に着けることができると学会で教わりました。

理由は、認知科学に基づいた勉強法だからです。

  1. 教科書を何度も読むよりも、自分の記憶から引き出すことで知識は定着しやすくなります。(=自分で思い出す) 

    →確かに、自分で経験した症例のことは忘れませんよね。特に痛い思いをした場合・・・
  2. 集中して学習するよりも、時間を空けて分散したほうが学習効果が高くなります。(=寝る前に振り返り) 

    →退院したからOKとか、コンサルトしっぱなしで後は知らない、ではよくないですよね。あとの項目にもつながりますが、自分の診療が良かったのか検証することは大事ですね。
  3. 同じ分野ばかりを勉強するのではなく、関連した異なる分野を交互に勉強することの効果が知られています。(=ホスピタリストは様々な疾患を常日頃からみているため、毎日異なる分野を自然に学習)

    →総合診療医は様々な主訴・異なる臓器の疾患に対して日々対峙しなければならず、アップデートが大変だと思いますが、日々の診療の中で地道に勉強を続けていくことが必要ですね。学問に王道はありませんね。

以前読んだ安川先生の「科学的根拠に基づく最高の勉強法」という本でほぼ同じことをより丁寧に説明してくださっていましたので、是非一読をおすすめします。

多くの人が自然としていることかもしれませんが、科学的裏付けがあると説明を受けると納得した気分になりますね。

2. 鑑別診断の重みづけ

続いては臨床推論の力を磨き続ける方法です。印象に残った点を2つ述べます。

シンプルですが、「何の疾患を一番疑うか」を自分の中で明確にすることが大切です。

「國松の内科学」では診断にベットする(賭ける)という表現が使われています。

臨床医は、不確実性がある中で予測を立てなければなりません。検査の結果が出ていない段階でも予想して、緊急性に応じてマネジメントを開始する必要があります。

鑑別診断をあげるだけでは意味がなく、検査・治療方針などの意思決定に役立てなければいけません。ただ羅列してある鑑別疾患は意思決定には役立たず、重みづけ・優先順位づけをして初めて意思決定につながります。

研修医時代の指導医は「鑑別診断を立てたら回収しなければならない」とよくおっしゃっていました。例えば頭痛の鑑別疾患は?と聞かれて「くも膜下出血」と答えられるだけでは意味がなく、それをどのくらい疑っているのかという重みづけがないと、頭部CTを撮像するか?という意思決定を行ううえでは意味をなしません。

同様に、他科にコンサルトするときも、自分なりのアセスメントを記載することが重要です。

学会では、「53歳男性の血小板減少です。精査お願いします」ではなく、「53歳男性の急性の血小板減少で、敗血症が原因と考えています。HIT/ITP/TTPは考えにくいと思いますが、いかがでしょうか?」とコンサルトする例があがっていました。

ここは自分自身悩んでいたところで、変に非専門分野のアセスメントをして間違っているといわれることを恐れて、自分の意見を言わずに、シンプルに困っていることだけを伝えていたこともありました。

ただ、それでは自分の上達にはつながらないので、誤っていることを恐れずに自分の意見を専門家に問いたいですね。

そのうえで専門家の診療を見て、

・プロブレムの立て方が同じだったか?

・どんなデータを重視していたか?

・ガイドライン通りの診療をしていたか、あえて逸脱した治療をしていたか?

・検査や治療閾値を決めたものは何だったか?

という意思決定の背景にある理由を探るのが大切だと教わりました。

身近な例としてはドレナージが必要に思えた感染症診療で外科に相談するケースがあります。一方で外科の先生は外科の先生にしかわからない処置の利益と害を検討して、あえて保存的加療を選択されることもあります。背景にある理由を議論してお互いの認識をすり合わせていきます。

話はそれますが、いざというとき建設的な議論を行うために、日ごろから顔の見える関係、雑談もいいあえる良好な関係を築いておくことがとても大切だと感じました。

3. 経過のフォロー

最後は経過のフォローを行うことです。自分の診療が適切だったかを振り返るにはフォローアップが必須です。

以前から重要と感じていましたので我が意を得たり、というところです。

具体的には、

・退院後の外来フォロー

・退院時に未着だった外注・培養・病理などの検査結果確認

・再入院例の検証(未然に防げた再入院ではなかったか?)

・紹介後の患者さんのフォロー(かかりつけの先生からお返事いただけると嬉しいですよね)

・転科/転院後の追跡(ICUや他科コンサルト、高次医療機関への搬送など)

・急変対応後の振り返り(RRT対応例など)

・病理解剖

があげられていました。

特に痛い思いをしたときには気が重くなることもありますが、次につなげるためには良かった点・悪かった点を振り返らねばなりません。

他には当院でもM & M カンファレンス(死亡事例などを病院全体で検証する会議)なども実施していきたいのですが、no blame cultureで心理的安全性を保ちながら議論を進めることができないと雰囲気が悪くなることもあります。

日々の診療でトレーニングを行う

いかがだったでしょうか。

忙しいホスピタリストにとって、on the jobで仕事の中で知識やスキルを向上していく意識があるかないかで、5年後・10年後に大きな変化が出るように思います。

私自身未熟さを痛感することも多いですが、今回特に印象に残った3つのことを意識して診療に取り組んでいきたいと思います。

皆様もご自身にアレンジした生涯学習の方法を探してみてください!

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